互いの尊敬の先にある生地づくり

第7講は「互いの尊敬の先にある生地づくり」をテーマに、POSTELEGANTの中田さん、葛利毛織工業の石田さんにお越しいただきました。

ともに岐阜県出身、服飾の専門学校卒業後、共通の知人を介して知り合ったというお二人。
中田さんは昨年9月に企業から独立してブランドを立ち上げられ、石田さんも昨年から現在の機屋でお仕事をされています。
友人でもあり仕事のパートナーでもある中で、良いものづくりのために大切なことを伺いました。

まず、何よりも「産地に足を運び」「顔の見える関係性を築くこと」が大事だと話す中田さん。
産地の工場、職人さんの存在あってこそのものづくりであり、デザイナーとしての自分の立場がある。と繰り返しおっしゃっていました。

信頼関係を築くために、デザイナー自ら産地に足を運び、工場の職人と腹を割って本音で話す。そんな中田さんの、服づくりにかける想いと姿勢は、石田さんへも伝わっているようで
「普段より一層、頑張って作ろうと思える」
と、石田さんはおっしゃっていました。

生地の開発や縫製・加工の方法にこだわり抜いた中田さんのデザインは
石田さんの勤める愛知「葛利毛織工業」の素晴らしい素材によって初めて形となります。
「腕の良い熟練職人さんは、まず機械の扱い方が違う。細部への心遣いが一流のクオリティを生んでいる」と、石田さん自身も感服する葛利毛織工業で織られた生地。少しでも技術をあげるために、石田さんは毎晩遅くまで機械を動かし経験を積まれていらっしゃいます。

講義の最後に伺った「これからも産地が生き残るために必要なこと」という質問には
「デザイナーという立場から、多くの仕事を工場にお願いできることが何よりの貢献」と中田さん。
うまくタッグを組みながら、洋服を想いとともに発信し、産地に利益を還元する。
「とにかく生地が好きなんです」と何度も話してくださったその言葉通り、工場を、機屋を大切に考える意志がとても強く表れてらっしゃいました。

一方、産地の中にいる石田さんは「自分の周りの人間、特にこの業界を目指す人にとって誇れるような働き方を」とのお言葉。

工場内の高齢化はますます進行し、60、70代が現役真っ盛り、40、50代がほとんどいないという現状の中で
30代にして業界に飛び込んだ使命感を持ちつつ、ストイックに働き・語る石田さんの姿に
「産地の学校」受講生たちも引き込まれ、心打たれた様子でした。
経験を通じて得られたまっすぐな言葉は力強く響き
「好きを仕事に」するという裏側では
たゆまぬ努力と意識の高さが支えているということを教えてくださいました。

互いの仕事を尊重し、時間をかけて築き上げたお二人の
信頼関係が幾度となく感じられた、思い出すたび
胸の熱くなる回だったと思います。

山脇

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