産地で引き継ぐ技術

遠州産地の学校の授業、今日は機屋さんが教室となりました。ケイテキスタイル株式会社の浜名湖工場へ伺いました。

ケイテキスタイルの橋本さん、濱さんに案内をしていただきました。こちらの工場で主に生産されるのは細番手のシャツ地です。

旧カネボウ時代よりシャツ地中心に生産していた工場でしたが、2016年4月の廃業状況に伴い、ケイテキスタイル株式会社が引き継ぐ形で、ケイテキスタイル浜名湖工場は始まりました。シャトル織機にこだわった細番手のブロード生地を現在も織り続けています。

エジプトのギザ綿やインドのスビン綿(超長綿)といった高級綿糸を使用し、ドビー式とタペット式のシャトル織機で織り上げた風合いある生地が特徴で、国内有名ブランドのシャツ地にも採用されてきました。

シャトル織機とは織物をつくる織機の種類の1つで、よこ糸を入れたシャトルが左右に往復しながら生地を織っていきます。織る速度がゆっくりで、よこ糸を通す際のたて糸の開口が広いため、糸を痛めず、風合いの良い生地が織り上がります。また、よこ糸が布の端で往復するので、布端に耳が出来ることも特徴です。

写真のシャトルの中に、よこ糸が巻かれたボビンを入れて使います。

織るスピードに限界があるため、大量生産には使われなくなり現在では希少なものとなりました。織機だけでなく、織機の部品の製造もほぼなくなってきているそうです。ですが、シャトル織機にしか出せない風合いがあり、そのシャツ地を必要としているブランドやファンがいます。旧カネボウからシャトル織機を引き継いだのは、その貴重な織機をなくしてはいけないという想いがあったようです。

実際に織機が稼働している現場を見せていただきました。

湿度管理がされた部屋に織機がずらり。稼働しているドビー式、タペット式のシャトル織機と、試験織り用として置いてあるというレピア織機がありました。織機の稼働音が大きくて、大きな声で話さないと、会話が出来ません。

稼働していない織機を覗きこみながら各部品の説明をしていただきました。現場を見る前に聞いた講義の復習です。「綜絖は下のタペット(カム)の回転により確実な開口となる」というのはここの部分のことか!と、実際に見てみると更に理解が深まります。

機械を使って生地幅分の全てのたて糸を繋ぐという作業にも立ち会うことができました。今までの講義には出てこなかった作業で、一見すると機械でたて糸を切っているようにも見えるこの作業。この機械を「タイングマシーン」と言うそうです。

現場を見て、知らないことを受講者の皆さんと共有しながら理解を深める。座学や資料を読むだけでは知り得ない部分を見させていただき、学ぶことが多かったです。

講義も終わりに近づき、質疑応答の時間です。

受講生の繊維の知識や専門分野が異なるからこそ出てくる質問と、疑問が疑問を呼ぶその連鎖が、毎回おもしろいのです。

「あの作業は一体何?」という質問に始まり、質問を繰り返していくうちに水質と染めの関係性を教えていただき、「え、染めの前処理って何?」というお話になり・・・機屋さんへの質問に留まらず、繊維業界全体のことを教えていただいていました。

同じ繊維業に属していても、産地や立場によって聞きなれない言葉はたくさんあります。その言葉はどういった意味で、どう使われているのか、現場の方に直接聞ける機会は大変貴重です。

特に興味深かったおはなしがひとつ。

シャトル織機の特徴である、布端の耳まで製品に使いたいという取引先のために、普通なら付いてしまう布端のキズをなくす工夫として「クリップテンター」というものがあるそうです。普通、布端はテンターという針で両端を留めるのですが、傷をつけないためにクリップのテンター「クリップテンター」を使うそう。遠州産地の学校の整理工程の授業で見れるそうなので楽しみ。

そういったこだわりが各所に潜んでいて、こだわりと愛着の深さが、ファンを納得させて、時代に残るものづくりとして続いていくのだと思いました。


久野