編んで、切って、縫う

東京校第8回目となる講義が行われました。
前回まで2講に渡り勉強した横編みを離れ、今回学んだのは「カットソー」です!

「カットソー」という名前は頻繁に聞きますが、「じゃあカットソーって何?」と聞かれると答えられないのが不思議なところです。
「カットソー」とは、「編み物なのに、切って縫う」もの。
その名の通り、cut&sewですね。カットソーにも編み方はいくつかありますが、今回は丸編みのカットソーを学びました。

今回の講師は、丸編みのメーカーに13年間勤めた後、現在はカットソーのOEMを経営している山本さんです。
山本さんは新潟県佐渡ご出身のバンドマン。バンドをするために上京し、アルバイトとして丸編みのメーカーに入ったことが今の仕事に繋がっているそうです。

とても簡単に言ってしまえば、丸編み機は横編み機を丸くしたもの。
カットソーの約9割は丸編み機で編まれるそうです。糸を供給する給糸口が円を描くように
48~90個配置され、給糸口からの糸が一本ずつ螺旋状に編まれていきます。編み機の周りを囲うように、コーンに巻かれた糸の塊が設置されています。

山本さんが丸編み機の仕組みを簡単に表した模型を作ってくださいました!

給糸口から出る糸を色分けして作ってあったので、とてもわかりやすく機械の大まかな仕組みを理解できました。

丸編み機は給糸口の個数が48~90とだいたい決まっているので、使用する糸の本数も48~90本だそうです。たて糸を設置し、綜絖や筬に通す織物よりセッティングが楽なのがメリットだそうです。

一方、螺旋状に編まれるので、生地の斜行は避けて通れないことや、少量生産しにくいのがデメリットだそうです。

サンプルも見せていただきました。

丸編みの生地組織は大まかにシングル編みとダブル編みに分かれています。
シングル編みは表と裏で編み目が異なりますが、ダブル編みはシングル編みの生地が2枚くっついているイメージだそう。シングル編みとダブル編みはでは、機械も別のものを使うそうです!

シングル編みにはTシャツの生地になる平編み(天竺)やポロシャツのタック編み(鹿の子)などがあります。

カットソーといえばTシャツが一番最初に頭に浮かびますが、ストレッチ性の強い薄い生地。

手で持つと驚くほど柔らかい生地もありました。

カットソーの基本について学んだ後は、山本さんにカットソーの商品企画から発注、生産、納品までの流れを解説していただきました。生地を開発する場合、織物は整経などの工程が必要になる分、生地を織るまで準備工程の工場が多くなります。

一方、ニッター(編み工場)は生産に必要な糸を仕入れた後、編み機にセッティングして編んでいくので、糸のセッティングにかかる時間が布帛と全く異なるそうです。

しかし柄を編む際、編み機にセッティングされているベラ針が通る溝、「カム」を入れ替える作業などは職人が2日かけて行うこともあるので、編み柄を変えるには相応のロットと費用をかける必要があるそうです。
大量生産に向いている分、複雑な柄の変化や少量生産が苦手だということが理解できました。

最後に、生地の生産発注でなぜチャージアップが起こるのかについて詳しく解説してくださいました。

丸編みの生地だけではなく布帛にも横編みニットにも当てはまるので、生地を依頼したい人もや将来生地を作りたいと思う人も、生産発注に関するビジネス的な知識も学ぶことができました。

発注をするアパレル側が、工場で生地を作る人に対しより理解を深めるべきだと山本さんはおっしゃっていました。

糸の手配や機械のセッティング、納期などを学び、つくり手とコミュニケーションを取りながらものづくりをすることが、日本の繊維産業を支える重要な方法だと改めて感じました。

山本さん、貴重な講義をありがとうございました!

森口

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