ニットの専門家と考える産地の未来

第4講は横編みを講義テーマに、大阪からニッティングバードの田沼さんに来ていただきました。

群馬県太田市出身の田沼さんは、小さいころから繊維産業に囲まれて育ちました。周りの良い繊維企業が衰退していく姿を身近で感じ、さまざまな工場を紹介する活動が今のお仕事のきっかけになったそうです。

今回の講義ではニットの基礎知識から教えていただきました。
まずは織りと編みの違いから。
織物は糸が交差して成り立ちますが、編み物の特徴はループで作られており、伸縮性や通気性が優れていること。

次に横編み、経編み、丸編みの違いについて。
田沼さんの専門である横編みは市場に流通している中でも一番多い編み方。
その名の通り機械が横に往復して編んでいき、裾を始末せずにそのまま使えることも特性があります。

田沼さんの用意してくださった用語集を見ながら、リンキングなどのニット独特の縫製などのお話も伺います。

ニットの後加工は洗い、縮絨、アイロンセットなどがあり、素材によって加工時間も異なります。縮絨などはニットに縮みが発生するので、編みの時点で収縮率を計算して設計されるそう。

田沼さんが持参してくださった沢山の編み地サンプルたち。

ニットの独特の面白さは、製造工程だそう。
ニットはニットデザイナーが糸の選定から編み方、シルエットも全て決めることがほとんどだと言います。つまりニットデザインには糸、素材、編み、機械の特性など幅広い知識が必要になるのです。

田沼さんオススメのニット工場や、各産地のオリジナルニットが特徴的なブランドなども教えていただきました。とても熱のこもったお話で、受講生もメモする手が止まりません!

ニットにまつわる新事業例については、
「気仙沼ニッティング」を例に挙げ、地場産業での産地活性例やアプローチの仕方など教えていただきます。

最後に、産地の抱える課題について伺ったところ、一番目立つのは職人さんの高齢化と言います。
たくさんの工場を回った田沼さんの目線から、現役の職人さんたちが大勢引退するまでが、おおよそあと5年という現状。。この5年という期間は、若い担い手が現役職人さんから技術を継ぐための期間とも言えます。この5年で技術を継ぎ、時代に沿ったテキスタイルづくりや地場産業を盛り上げる仕組みを作ることが産地にとって必須になってきます。

講義を学んだ後には、「どうやったら産業が活性するか」「新しいビジネスモデル」「繊維企業が異業種と出来ること」を議題に、グループディスカッションを行い、グループごとに発表をしてもらいました。ニット業界のこれからについて考える時間。

残糸利用や閑散期対策、販売方法の工夫などたくさんの意見が出てきます。実際にそれを実行に移すときに何がネックになるかなど田沼さんと意見交換をしました。

産地に働きかける方法を考えることで、課題や可能性が具体的に見えてきます。今回出た意見の中には、すぐにでも実行できそうなこともたくさんありました。産地の学校で今後このアイデアを受講生と産地の企業とともに実行していくところまでが私たちの目指すところです!

横編みに続いて、来週は丸編みの授業です!

遠坂

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