横編みニットを知る

2019年最初となる講義が行われました。昨年まで織物を学んできましたが、今回から編みを勉強していきます!

2週にわたり行われた講義では、横編みニットについて学びました。

講師は、現在東京でニットやカットソーの営業・生産管理等を行なっている嶋田隆弘さんです。嶋田さんはニットの産地である山形県のニット工場で働いていたこともある、いわばニットのプロです。

ニットを構成する三大要素、番手(毛番手)・ゲージ(度目)・編み柄からニット製造の流れまで、横編みニットの大まかな基礎を学びました。

これまで織物を学んできたためか、まずニットの常識に慣れることが大変だった今回の講義。

まず織物とは異なり、経糸と緯糸がありません。ニットは一本の糸を編んでいくため、当然と言えば当然ですが、これまで経糸と緯糸で形成される織物を学んできたきので、糸のセッティングから異なるニットに戸惑いました。

講義は編み物の原理を知るため、手編みの実習から始まりました。

編み物教室のように、みんなで和気あいあいと編み物の実習です。
「編み物に目覚めたかも…!」という声もちらほら。

ニットで主に使用される繊維は毛で、毛糸の細さは番手計算です。1kgで1kmの糸が1番手となり、km数が上がると自然と細い糸になります。

横ニットの編み方の種類は大きく分けて4つ。
1つは実習で行なった手編みです。続いて半自動式の「手横」と呼ばれる機械と、PC制御の自動機があります。そして最近話題のホールガーメントです。ホールガーメントは、服の形に編み上げていくものです。

編み機には溝があり、この溝の中に細い金具の針が無数に入っていました。溝の幅1インチ(2.54cm)の間に何本の針が入っているかで、編み目のつまり具合が決まります。1インチ間に3本の針が入っていたら3ゲージ、1インチに8本の針が入っていたら8ゲージです。

ゲージの数が上がるほど編み目が小さくなります。嶋田さんはニットを見ただけで何ゲージかわかるそうです!

つまり、糸の番手とゲージの組み合わせでニットは編まれていきます!

嶋田さんが実際に手横を動かしてくださいました。

嶋田さんが溝がある部分の上に取り付けてある、糸と繋がった部品を左右にスライドさせて行くと、糸が編まれていきます。糸と繋がっている部品が溝の上を通るたびに、「ジリジリジリ」という独特な音が鳴っていました。編み上がった生地は下から出てきます。

PC制御の横編み機を製造する会社は世界でも少なく、1つは国内のほとんどのシェアを誇る島精機製作所です。世界で唯一ホールガーメント機を製造できる会社でもあります。

編み生地は織物と異なり、反物という単位で作られません。多くのニットは「成形」と呼ばれる、服の部品ごとに編んでいく方法で編まれます。つまり、複数の機械で胴部分と袖部分をそれぞれ分けて編むことになるので、生産する際の単位が着分になります。

織物は経糸と横糸を組み合わせて織った生地をカットし、縫製します。

カットソーはニットの一種ですが、縫製は織物と同じです。ニットはニットの機械で織った後、ニット独特の縫い方で縫製していきます。

中でも特殊だと感じたのは、リンキングと呼ばれる縫製の一工程です。首回りになるような部分になる編み目一目一目に、糸を縫っていきます。こうすることで、ネック部分に伸縮性を持たせることができるそうです。

リンキングは手作業で行うことも多い工程ですが、大変な作業のため技術の高齢化が進み、人手不足が進んでいるそうです。家にあるニットの首回りを見てみると、編み目に対して横向きに糸が縫われていました。

横編みニットの基礎知識を学んだところで、製品製造の流れについて学びました。企画が出たら素材と色を決め、サンプルを製作します。量産に向けて異なる糸の太さや素材、ゲージのサンプルをいくつか作るそうです。

製品としての基準をクリアするための編み地検査があり、堅牢度やピリング、縮みによる寸法変化を検査機関でチェックするそうです。特にウールは、同じ製品でも縮みやすさや色の入り方が微妙に異なるため、何度も確認しなければいけないといいます。

同じ釜の中、同じ温度、同じ染料で染めても、羊や綿の種類が違えば出る色が若干異なります。横編みは糸を段状にして編んでいくので、糸の色の違いがくっきりと目立つそうです。その場合、「インキング」と言う色調節をします。

スプレーや筆で色の変わり目を目立たなくさせる技法で、「大抵のことはインキングでどうにかなります!笑」と嶋田さん。

スプレーや筆で色を調節しているなんて初耳でした!

最後は「産地の学校」らしく、日本のニット産地を紹介してくださいました。日本では新潟、福島、山形、群馬など、主に北関東から中部、東北にかけてニット産地が多いそうです。

ゲージ数によって得意な産地が分かれ、新潟ではハイゲージが多く、山形ではローゲージが多いとそうです。寒い地域に工場が多いため、乾燥や低温を防ぐ工場管理が重要になります。

天然繊維のウールを使うことが多いニット。温度や湿度、編み方、洗い方によって良くも悪くも表情が変わってしまいます。糸や編み柄、加工によって予想と異なった生地ができるのが、ニットの良さだと感じました。

嶋田さん、2回に渡りありがとうございました!

森口