東京校第4期が本格的に始まり、第2回の講義が開かれました。
第2回講座のテーマは「素材と染め」。何かを作る時は、材料の特性を知っていた方が断然良いですよね。テキスタイルも素材、つまり繊維や染液の特徴を知って使えるようになれば、企画・開発がよりスムーズになるかもしれません。
ということで今回は、京都で草木染のブランドtezomeyaを運営している青木正明さんにお越しいただき、素材と染色について講義をしていただきました。(青木さんの過去講義も是非ご覧下さい!)
「そもそも繊維って何?」
早速青木さんが投げかけたこの質問に、私たち一同「うーん…」という表情。
確かに繊維という言葉はよく使うけれど、そもそも何が繊維なのか考えたことがありませんでした。すごく簡単に言ってしまえば、「断面積に対して十分な長さがあり、ポキっと折れずしなるもの」だそう。
繊維の定義を再確認したところで、青木さんが各繊維の性質を化学的な視点を交えながらたっぷりお話してくださいました。
植物繊維と動物繊維の違いから、綿や麻・絹・ウールの特性まで1つ1つわかりやすく解説していただきました。各繊維の成分や構造の違いを詳しく資料で見ていきます。青木さんのリズミカルなトーク技術に加え、植物や繊維の気持ちを代弁しながら解説する場面もあり、クスッと笑えながらも専門用語や性質がスッと入ってきました!
個人的に驚いたのは、化学繊維が作られた歴史や政治的背景でした。
今ではポリエステルにつぐ馴染み深い化学繊維「ナイロン(NYLON)」。ナイロンがアメリカで発明された背景やナイロンという名前が持つ意味など、誰かに話したくなる豆知識をお話してくださいました。他にも、いかに日本人が絹を使ってきたのか納得できる興味深いお話や、「紡績」という言葉の意味など、身近な素材や言葉の持つ深い歴史や意味合いを知ることができました。
繊維の特徴が大まかにわかったところで、ここから青木さんの専門である染色のお話へ。各繊維の特性を理解した上で染めを勉強することで、素材と染料との相性も理解しやすくなります。
私が衝撃的だったのは、世界で一番使用されている天然繊維、綿はウールよりも染まりにくいということでした。綿麻の成分であるセルロースは、ブドウ糖という一種類の分子だけでできているため、染料とくっつくバリエーションが1つしかなく上手く色がつかないそうです。天然染料・化学染料でも染まりにくかった綿を劇的に染まりやすくしたのが、「反応染料」と呼ばれるものだそうです。
反応染料は化学反応を起こしてセルロースとしっかりくっつく画期的な染料だったのですね!
講義が終わった後の青木さんへの質問タイムの様子です。講義の後も青木さんのお話を聞くべく、受講生たちがどんどん集まっていました。
青木さんは染めに良いとされる軟水と硬水の違いや、「環境にいいって何だろう?」といったお話まで、知識だけではなくモノづくりをするにあたり考えさせられる話題まで提示してくださいました。
川は、水が岩の間を通っていますが日本は川の距離が比較的短く急なため、水が岩の成分を運ぶ時間が短いそうです。そのため水の中に岩の成分があまり含まれず、柔らかい水になるのだとか。今まで山の麓になぜ染め工場があるのか疑問に感じませんでしたが、「だから日本では山の麓や盆地は染めの工場が多いのか!」と納得しました。
水のお話から環境問題へ話はシフト。繊維や染料に限らず、使うものが人にいいのか、動物にいいのか、水にいいのか、物事を見る視点によって「環境に良い」という言葉の持つ意味合いは変わるというお話がありました。物を作る・消費する私たちは、何かしらの環境に負担をかけています。1つの物への負担だけではなく、あらゆるものへの影響を見た上で、自分が何を一番大切にしているのか軸を決めるしかない、と青木さんはおっしゃっていました。
「繊維とは何か?」という疑問から始まり、繊維の性質や歴史、染めに繋がり、染料のお話がいつしか水問題へ、最終的には「環境に良いとは何か」という問題へ話が広がっていった今回の第2回講義。繊維の素材について基本的な知識を得ることで、そこから新しい疑問点や「もっと知りたい!」という欲が出てきました。
青木さん、貴重なお話ありがとうございました!
森口