織物に必要な機械と技術とは

12/1、東京校第3回目の講座。
この日は都心の学校を飛び出し、東京都八王子市にあるとある研究所へ。場所は京王線北野駅から徒歩10分程度の場所にある、文化ファッションテキスタイル研究所です。

ここはもともと、パリコレなどの世界的コレクションに出るデザイナーに生地を提供していた「みやしん」という機屋でした。現在は文化学園の文化ファッションテキスタイル研究所という施設になっています。
みやしんの
代目で、現在文化学園の講師をしている宮本さんが「織り」の組織や織機の仕組み、そしてこれからの服作りに必要な要素をレクチャーしてくださいました。

講義会場に入るとまず飛び込んでくるのは、部屋をぐるっとむように置いてある生地サンプルです。
1つ1つ作り込まれた生地の多さに圧倒されました。これまでの開発歴史です。

宮本さんが早速、織物が作られる工程を詳しく解説してくださいました。

織物は経糸と緯糸が直角に交差して作られるもの。織物を作るには、糸の交差させるための
開口装置や織機などの機械や技術が必要です。

まず、経糸の準備です。
先染め織物の場合、絹のように細く弱い糸や絣(かすり)染の場合などは、綛(かせの状態で染色を施します。綛状の糸は、機械に設置するためボビンやコーンに巻き直す必要があります。この作業をおこなうのが「糸繰り機」と呼ばれ、ボビンに糸を巻き取るための機械や、「ワインダー」と呼ばれる、コーンに糸を巻き取るための機械です。

ボビンやコーンに巻かれた経糸となる糸は、下の写真の右側、何個ものボビンやコーンに巻かれた設置されているクリールと呼ばれる装置に掛けられます。このボビンやコーンひとつひつから、繰り出された糸がその先にある大きなドラム状のような部分整経機に巻かれます。そして、さらにコンパクトに織機に設置するため、円柱状の経糸ビームに巻かれ、経糸が準備されるという仕組みになっています。

この「整経」という工程の後に、経糸がようやく織機へと設置されます。

宮本さんが、どのように織機に経糸を設置するのか、とてもわかりやすい図で解説してくださいました。整経され、経糸ビームなどに巻かれた経糸は、綜絖と呼ばれる経糸の上下(開口)運動をさせる穴に通され、さらに筬(おさ)と呼ばれる細かな櫛のようなものに一本一本通されます。筬は本当に隙間が細かく、糸の太さや密度によって間隔が異なるそうです。

綜絖・筬通しをまとめて「引き込み」作業といい、本数にもよりますが、ベテランの職人が手作業でやってもなんと2、3日かかるのだとか!

織物は「織る」だけではなく、織るまでの「準備工程」にも手間暇かかるんですね。
経糸のセットができたら、ようやく「織り」の工程へいきます。

講義室の大きな扉を開けると、目の前に広がったのは、みやしんの工場です。
異世界に入り込んだように、味のある織機が数十台も並べられていました。

研究所にあるのは力織機の中でも最も古いシャトル織機と、シャトルレスのレピア織機があります。
シャトル、レピアというのは、緯糸に関わる仕組みです。まずはシャトル織機を動かしてもらいました。

手で持っているのが、シャトルと呼ばれるもの。この中に緯糸を入れ、シャトルが右左に移動することで、緯糸を織りこんでいきます。
シャトル織機は、重たいシャトルが右左に動くため、スピードが出せないそうです。その分、糸を優しく動かすため風合いが良いのが特徴だそう。

織機の全体はこんな感じです。
触っているのは設置された経糸です。触ってみると、予想以上に張りがありました。一本一本では非常に細くもろい糸ですが、数千本まとまることで、手で押しても跳ね返すほど強力になることに驚きました。この経糸一本一本が左の綜絖や筬に通され、上下に
開口することで緯糸が織り込まれます。

その他にも研究所には、世界でも大変珍しい、異なるタイプの糸をつなぐことができる「アレンジワインダー」という機械がありました。

異なる色、素材の糸同士を途中で繋げることができるそうです。こんな機械があったら色々な糸を繋げて試したくなります!これからもっと研究が進めば、全く違う素材や太さの糸を繋げられるようになるかもしれないとおっしゃっていました。

最後に宮本さんは、現在の服作りは同質化していると指摘されていました。独自性の表現であったはずの服作りが同じようなモノづくりになってしまっているといいます。

宮本さんは28歳の時にみやしんへ入り、繊維から織物、染色のことまで徹底的に勉強しながら、モノづくりをしてきました。宮本さんは、染めた生地をわざと滲ませてみたり、アレンジワインダーで繋げた糸を使い細かなチェック生地を作ったりと、真新しい生地を作り続けていました。
織り組織などの基礎的な知識をこだわって学んだ上で、人とは違う生地作りを追求してきたからこその宮本さんの言葉は、これからテキスタイル業界でモノづくりをしようとする私たちに必要な姿勢を教えてくださいました!

宮本さん、ありがとうございました!

森口

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