今回は、第2回の講義でお世話になりました水内大策さんを再びお迎えし、これまで勉強してきた知識を改めて商品として落とし込むための、MD(商品化計画)と生産管理を合わせた「プロダクトマネジメント」についてお話を伺いました。
良いものをつくるには、良いテキスタイルだけでなく良い縫製工場さん、良い加工所さんなどが必要であり現場との関わり合いで成り立つことをおさえたうえで、半年に一度セール時期が目まぐるしくやってくるファッション業界において、デザイナーが心得ておくポイントを伝えてくださいました。
まずはこれまで生徒の皆さんが学んできたことから疑問が深まった部分を少しでも解消できるようにと、ブランドに勤めていた時代に培ったことや経歴をひも解きながら復習やステップアップのための肥やしになるお話がありました。
ブランドで生産を担当していた当時から、いかにシステム化し製品を確実にあげていくことができないかを考えて、仕事外の時間にもシステムのアプリケーションの勉強をしてこられた水内さんは、それが今のMDの礎となっているそうです。システム部に所属された後に一度現場に戻ったため、システム開発は途中に終わったそうですが、その頃から思案していたものを現在、水内さん独自の形で開発されています。
2012年に株式会社TOKIを設立されてからは、テキスタイルの加工のコンサルタントなどを経て、現在では小規模で運営しているデザイナーが生地屋などの取引先に対しどのように接していけば良いかといったことをサポートされています。あわせてファッションの専門学校にて講師を勤め産学連携の授業をおこなったり、産地の学校にて講義やラボコースのサポートをされるなど、ファッション業界を志す方々へのプロダクトマネージメントという視点からの指導にも力を入れておられます。
ここから、プロダクトマネージメントについてより深く知識を教わりました。
ものづくりの現場では業務を円滑に進めるためにPDCAサイクル( Plan / Do / Check / Action )という手法が用いられます。テキスタイルづくりだけで2ヶ月は要するファッション業界においてPDCAサイクルをスムーズにこなしていくためにも必要となってくるのが、ブランドにおける商品の基本構成のマップ化や商品生産においてのプロセスのガントチャートづくりでの整理と管理です。
製品化する服を実際につくらなくても具体化することである程度みえてくる「見える化」を掲げています。
可能性を並べることで実現できそうなことが見えてきます。並べてみると様々な制約により意外と選択肢は少ないそうで、それが明確になればもうそれに向かって突き進むのみ。逆に現実を見ずに闇雲にクリエイションを優先させてしまうと可能性が無限にみえてしまい、時間のロスになってしまうのです。多くの行程を経由するため、1週間遅れることが後に1ヶ月の遅れに繋がってしまいます。
また、デザイナー自身は自分たちの考えを整理することで、十分な戦略をもってコレクションに挑むことが可能になります。スケジュールをこなしていくことの重要性に気づかされました。
予算や原価率など、デザイナーが苦手とする面もサポートし、デザイナーが一番理解していて一番重要なことである「消費者が喜んでくれること」に重きを置くことができるようになることは、消費者がほしい時期に価格のあったものを提供し正規価格の商品消化率をあげることに繋がっていきます。本来獲得することのできる利益から次につくりたい商品を生み出し循環させていくことがブランドの成長にも繋がるのです。
マップやガントチャートに関しては、実際の図を用いて、価格などの数字的なお話からマニアックなところまで細かく丁寧に説明くださいました。
ただそんな中でも、数字ばかりにとらわれず、イメージ・コンセプトを表現でいているかを大切にしてほしいというデザイナーの想いを尊重する気持ちがありました。
講義の後半では折り紙が2枚ずつ配布され、生徒の皆さんでツルを折ることに。
まず1枚目は、折れた人から前に持ってきて机に並べていきます。先着の5羽ほどが並んだところで質問が投げかけられました。
「どの工場に頼みたい?」
早く仕上がってもどこか不格好なツルや、時間をかけて丁寧に折られたツル。様々並ぶ中で、ツルを商品とした場合の縫製工場のグレードにみたてて皆で検討しました。
速度や質、どこに重きをおくか。決められた時間の中で仕上げることももちろん納期の面で大切なことです。
ただ、クオリティーも求めてしまう。やはりどちらのバランスも良いものが一番人気でした。
2枚目は同じようにツルを折るのにプラスして、水内さんからの「1分経ちましたよ〜」といった急かす呼びかけがある状況がつくられました。
実際にやってみて、急かされる工場の気持ちが少し知れたように思います。
急かされると仕上がりが早くはなってもどうしてもクオリティーが下がってしまう部分は否めません。急かす状況になってしまうのは、企画の内容が決められないといった前段階で遅れがでることに原因がみられます。
凝ったテキスタイルだと縫製にも時間がかかってしまったり、その時々でタスクに対して必要な時間はあるのですから、クオリティーの面でそこを削らないでいいように、デザイナーとして今やるべきことと後に回せることを早いところ決断しなければならないのです。
そして最後には製品生産の実例として2つ紹介していただきました。
まずはスタディーコース2期生でラボコースの宿谷さんから、現在進行中の案件の紹介がありました。
現場との関係性の築きの大切さや、ガントチャートといったシステムが第三者的存在になりクライアントとのやり取りをスムーズにしてくれることを、より理解することができました。
続いて、スタディーコース1期生でラボコースの三川さんより、テキスタイルづくりから商品に落とし込む実践的なところにも触れながらラボコースでの生地開発企画の紹介がありました。生地の説明も詳しく、様々な可能性の中から加工方法を選び取りオリジナルのテキスタイルを求める重要性と楽しさを感じました。
貴重なサンプルと共に知識的お話を学んだ後、実例を知れたことでより深く理解することができました。
水内さん、この度はお忙しい中貴重なお時間をありがとうございました!
安岡