生地づくりのアンカー

遠州産地の学校、第6講は鈴木晒整理株式会社さんへ伺いました。

遠州を代表する、非常に技術力の高い整理加工場です。

晒(さらし)や整理は、普段はあまり聞きかない言葉ですが、テキスタイル製造では欠かせない工程です。「晒」とは、糸や生地から不純物を取り除き漂白すること。糸の状態で行う「先晒し」と生地の状態で行う「後晒し」があります。

こちら鈴木晒整理さんでは、生地で晒す「後晒し」で、織機から出て来たままの状態である「生機(きばた)」をきれいにします。生機の状態では、サイジングの糊や油、汚れがついているため、それを落とし漂白します。

また、その後生地を染める染色のほか、生地づくりにおいて最後の仕上げをする「整理加工」をします。「整理加工」では生地に風合いを付けたり、機能性を追加する加工のほか、生地の幅を整えたりします。

つまり、機屋さんから「生機」をバトンパスとして受け、生地を完成させる工場です。

今回ご説明いただいた専務の鈴木利尚さん曰く、アパレル業界に関しては原料の状態から製品になるまで、だいたい15社を通るそうで、鈴木晒整理さんもその中の1つ。なかなか表に立つことも少ない工程です。

しかし、鈴木晒整理さんは、独自性の高い自社にしかできない加工を数多く生み出し、展示会に出展されるなど積極的なPRをされています。

1つの生機から加工方法を変えることで、無限の表情をつくることができるのが加工の面白さとお話して下さりました。例えば、春夏物のシンプルなシャツ地として使用した生地でも、起毛をかければ秋冬物の生地になります。

世界中に様々な整理工場がある中で、鈴木晒整理さんの特徴は工程がわかれている「非連続」であること。

晒生地にするにも「生機→毛焼き→精錬→晒」の工程を主に踏みますが、この工程を一環でできる連続式の機械があります。しかし鈴木晒整理さんで使用している機械は各工程ずつのもの。工程1つ1つがバラバラなため手間はかかりますが、生地を休ませることができるためかかる負担が少ないことや、工程の順序を変えるなど工夫がききます。

水を沢山使うため、湿度の高い工場内。

遠州産地の学校で行った中で、一番広い工場内。沢山の機械があります。
そんな現場での働き手に関して言えば、若い女性が増えてきているそう。

現在は従業員約70名中、半数が20代・30代を中心する若い世代。20年前は平均年齢59歳だったそうですが、根気づよく採用をし続けているそうです。

鈴木晒整理さんでも多くされている生地染めのように、1つの工程を経るたびに見た目が大きく変化しているものもあれば、風合いを出すような触らないとわからないものもありました。

遠州産地ということで天然繊維を扱うことも多い工場では「同じものをつくって」と言われても、日々の湿度や気温、原料などによって細かい調整がとても難しくなります。
「安定した品質」が当たり前ですが、働く方々の経験や努力があってのことだと改めて感じました。

最近の加工業界の傾向としては、「風合い」よりも「機能性」に対して注目が高まっているそうです。

理由はネット販売が増えているため。以前は店舗で実際に製品に手を触れて購入することが主流のため「風合い」を大事にする傾向でした。しかし現在ではネット上での販売が増え、写真や言葉だけでわかりやすいものが人気とのこと。ものづくりの現場はいつでも市場と繋がっています。

受講生からの様々な質問に対し、丁寧に、そして楽しそうにお答えくださった鈴木専務。

講義中の「好きだと、興味が湧きますよね」というお言葉が印象的でしたが、ご説明される姿から何より鈴木専務がこのお仕事がお好きなんだと感じました。

鈴木晒整理株式会社の皆さま、ありがとうございました!

事務局

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