遠州産地での青空教室を開催しました

遠州産地での青空教室を開催しました

産地の学校では必修授業に加えて、受講生の中から希望者を対象に、産地遠征や工場見学も行います。
はじめての遠征は、遠州産地に行きました。

2日間で4名の講師をお招きして青空教室を行って、翌日は工場見学をさせていただきました。

まずは青空教室の1限目です。
遠州織物工業組合の事務局長の松尾さん(右)と、高田織布工場の高田さん(中央)にお越しいただき、産地の歴史や、遠州織物の特徴についてディープなお話を聞くことができました。

松尾さんが遠州織物工業協同組合に加入した当時は1200件の機屋があり、繊維産業が衰退しかかっていたころ。現在は組合に所属する?約70件弱まで減ってしまいました。

繊維の一大産地に数えられるほど織物が盛んになった背景には、機械織機を開発した現豊田グループ創始者である豊田佐吉の住む湖西市が浜松市の隣に位置していたこと。また、浜松市は日照時間が長く、水も多いことから綿栽培が盛んに行われたことがありました。

遠州は繊維以外の産業も多く、行政の支援が繊維産業まで届かなかったそうです。その影響で大手は撤退し小さな機屋が残りました。昔ながらの織機を使い続ける機屋さんが多かったため、遠州にはシャトル織機が多く残っています。
高田さんは元車の整備士さん。繊維産業の背景には自動車メーカーが元々織機を作っていたという歴史があります。

高田織布さんは国内外の様々なファッションデザイナーともお仕事をされています。そんな受注生産をしながら、オリジナルの生地も沢山作っています。自分の着たい、好きな生地を作りたいという思いから開発した、肉厚な『ごっつい生地』を見せていただきました。お二人の着ている素敵なジャケットは高田さんの作った生地で仕立てたものです。

青空教室2限目は、瀧本織布の瀧本さん(右)と、エム・村松ジャガード織物の村松さん(中央)にお話を伺いました。

瀧本さんは遠州の生地を実際に購入する場を提供したいという思いから店舗も作り、機屋さんでありながらも最終製品まで生産されています。
瀧本織布さんの開発した生地を見せていただきました。(写真左、宮浦の持っている生地)
こちらは絽のリバーシブルプリント生地です。両面にプリントするのは大変困難で、それに成功したのは機屋ならではの織りの技術があってこそだそうです。

村松さんはジャガード一筋の機屋さん。ジャガードの仕組みについて詳しく説明していただきました。ジャガードの大きな特徴は、経糸を一本単位で上げ下げできるので大きな柄や複雑な組織を作れることです。村松さんの生地もいくつか見せていただきました。蜂巣織などの立体的な織組織をいつくか交えた生地はジャガードでしか作れない生地です。

そして翌日は職人さんのお話で学んだことを踏まえて、遠州織物会館と浜松市内の工場を3つ見学させていただきました。

まずは遠州織物会館へ。
遠州織物工業協同組合に加入する機屋の紹介やサンプルが沢山置いてあり、3階には事務所を構える会館で、一般の方も入ることができます。

昨日トークイベントでお話していただいた松尾さんが迎えてくださいます。
松尾さんに遠州の歴史やそれぞれの機屋の特色などを伺いながら、色々な機屋さんの生地を実際に触れてみました。

そして工場見学のスタートです。
まず1社目はトークイベントに来ていただいた高田織布さん。
高田織布さんは浜名湖の中央に位置する工場です。

レピアルームのドビー織機が、綿ぼこりの中に沢山並んでいます。綿ぼこりの量は綿や麻の布を沢山織っている証拠です。
高田さん自ら織機の構造やレピアの仕組みを教えてくださいました。機械を少しずつ止めて、動かす、を繰り返しながら見せていただき、普段は高速で動いているレピアルームの仕組みがよく分かります。
レピアルームはシャトルレス織機の先駆け。何と言っても生産スピードの速さが武器です。
高田織機さんで織っているものは麻、綿、化繊がメイン。中でも麻が1番多いそうです。

次に訪れたのは、古橋織布さん。
まずはハンガーの沢山かかったお部屋で、社員の濱田さんが遠州織物について、古橋織布の歴史や特徴について丁寧に説明してくださいました。
古橋織布さんは遠州で昔から盛んな綿布を得意としてるようです。特徴的なハンガーをいくつかピックアップして、どのような素材、加工なのかをお話ししてくださります。受講生の皆さんも真剣な表情で1つ1つの布を触ってみます。

次に工場を見せていただきます。
先ほどの高田織布さんとは少し違った音がするのは、シャトル織機を使用しているから。
濱田さんに伺ったところレピアに比べてシャトルの方が開口が広く、経糸が上下に波打った柔らかい布になるようです。
1日に実際に稼働してる2タイプの織機を見ることができるなんて大変貴重な機会です!


そして最後に二橋染工所さんへ。
二橋染工さんは先日の染め織りマーケット会場で紫陽花の手ぬぐいを染める実演をなさっていた、注染を得意とした染工所さんです。
注染という染め方は布を蛇腹状に折りながら、型を使って防染糊を布の間に入れます。次にジョウロの様なもので色を差し、バキュームで下から染料を吸う作業を裏と表二回やることで、裏表に均一に染料が入ります。また何反も同時に染めることができるので大量生産にも向いています。
糊置きをする板場と、染料を注ぐ紺屋という役割が2人1組で仕事をするそうです。

注染の開発は、長板染めの職人さんが行ったそうです。
長板と呼ばれる木の長い板に布を固定し、端から型と糊を持って染めていくのが長板染め。
なるべく狭い作業範囲で一気に染めることができるように注染は開発されたそうです。

機屋の職人さんのお話を伺い、実際に工場を回り、遠州の歴史、織機や注染の構造を学ぶことのできる貴重な3日間でした。
今後も産地の学校では都内含め産地に実際に足を運んでいただく機会を作っていく予定です。

遠坂

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