真似することのできない技術

遠州産地の学校第3回は古橋織布有限会社さんへ伺いました。

遠州産地の元気な機屋さんとして第1回講義でも名前が挙がった機屋さん。
「遠州産地の学校」事務局の浜田さんが新卒で入社されている機屋さんでもあります。

古橋織布さんの特徴はシャトル織機で織り上げた高密度の生地。
それは軽くて薄いのに透けない、ちょっと不思議な生地です。

社長と、企画の浜田さんにお話を伺いました。

古橋織布さんはもとは小幅の機屋さんとして始まりました。時代の流れで高速のシャトルレス織機が主流になる中、「シャトル織機で織った生地を大事にしたい」とシャトル織機を残し、現在でも大切に使われています。
かつて事業存続のために「賃機」から「直販」に転向し社長自ら生地のデザインを行うようになったり、事業継承のために機屋さんでは珍しく新卒を採用するなど、会社を長く続けていくために挑戦を続けています。

シャトル織機は古い織機ですが、まだまだ他社でも使われているそう。
そこで他社と差別化を図るために古橋織布さんでは「高密度」の生地にこだわります。
自ら装置を改良し、高密度の生地を織れる織機に設定しています。

講義の中で、印象に残ったお話があります。

「うちの高密度の生地は、たとえ中国に持っていっても真似することができない。なぜなら、中国には高密度に織るための技術が無く、織機が壊れてしまう。そして高密度という難しい織り方をするための前工程が中国ではできないから。」と社長はおっしゃいます。

浜松では前工程を担っている工場の技術が高いため高密度が実現できるのです。
産地に他のどこにも真似できない技術があることは心強く誇りに思います。

初めて実務作業も教えていただきました!『機結び(はたむすび)』と『縞割り(しまわり)』です。
『機結び』は切れたたて糸を結び直す作業。やってみるとちょっと難しい。これができると現場でお役に立てるようになるとか…?
『縞割り』は、依頼されたデザインから織り上がりをイメージして、たて糸の本数や並べ方を決める作業です。数学的難しさがあるのですが、理解すると数のパズルのよう。また制限のある中でデザインを考える面白さがありました。

分からないところは受講者同士で考えたり、質問したり。
現場で使える技術を、直に教えて頂けることはなかなか無い貴重な機会です。ひとりで資料を読みこむよりも、どんどん頭に入ってきます。

工場を見学させていただきました。

織ったばかりの真っ白な生機が美しい。大切に今でも使われている織り機には繊維が白く厚く積もり、工場の歴史の長さを感じます。

工場を回らせていただくと、経通し(へとおし)されている女性がいらっしゃいました。一体何本あるの…という気が遠くなるほどのたて糸を一本一本通していきます。その様子を受講生でぐるりと囲んで、見学させて頂きました。

ほかにも工場の端に片付けてあった筬を持ってきて、道具を使った筬通しのやり方を教えていただきました。
昔ながらのアナログな道具なのですが、とっても不思議な動きでどんどん筬の段を移動します。皆さんで体験しながら「なんでこうなるの?」と盛り上がりました。

場所を移動して木造のおうちの2階にある、ショールームへ案内して頂きました。日当たりがよく、とても心地良い空間です。

そこにはハンガーにかけられた表情豊かな生地がずらり。平織りだけでも200品番あり、その中には20年以上も発注され続けている生地もあるのだとか。
同じ平織りでも、使う糸や後加工によって全く見え方が違います。

皆さん、近くで見て、触って、たくさんの質問が飛び交います。思わず自身の制作に役立てたいと、サンプルをお願いしている方も。こうした横の繋がりが生まれるのも遠州産地の学校のおもしろいところです。

生地に「高密度」という付加価値を付ける。海外との直接取引に挑戦してみる。
新卒採用に踏み切り、若手の力を信じて仕事を任せる。既存の仕組みを疑い革新していこうという姿勢を感じました。

その結果は、現在の古橋織布さんの立ち位置に表れているのだと思います。

久野