静岡県浜松市、遠州産地の現場を教室とする「遠州産地の学校」。
全8回の講義を通して、浜松市と一緒に遠州産地の人材育成・発掘を目指します。
そんな「遠州産地の学校」、第1回目の講義が遠州織物会館にて行われました。
事務局と受講生全員が顔を合わせるのはこれが初めてです。
まずは自己紹介。
繊維や洋服に関わるお仕事をされていて「もっと繊維の事を知りたい!」という方や「地元浜松がこんなに良い生地を作っているなんて知らなかった」、講義をきっかけに「地元の工場さんとコラボレーションしてみたい!」なんていう方も。
静岡、愛知、京都、広島(!)東京から、年齢も職業もバラバラの皆さんが集まりました。
続いて事務局からは全国の産地概略と遠州産地の立ち位置、概要についてのお話を。
日本の繊維産地は崩壊寸前と言われながらも、それぞれの産地の持つ特徴と強みを活かして活性のある産地も有ります。
その中で遠州産地は何でも織れる事、シャトル織機の所有量が日本一で高付加価値の生地が織れる事が特徴です。(「何でも織れる」という所から特徴が無い、と言われる事もあるそうです…)
戦後の復興を助けた繊維産業でしたが、時代の流れとともに衰退。大きな工場は繊維業を辞め他業種に転換していきます。
しかしその結果小さな工場が残り、自社企画を行う等、面白い動きになってきました。
遠州織物工業共同組合の松尾さんは「これからは『遠州産地』というブランドだけに頼らず、それぞれの工場の名前が前に出てブランドになるべき」とおっしゃっていたのが印象的でした。
日本の繊維産地を俯瞰で捉えた後に、遠州産地にフォーカスしたお話が出来るのは「遠州産地の学校」ならではです。
そしていよいよ生地の講義へ。
浜松市にある古橋織布の浜田さんによる繊維と織物の基礎講座です。
生地スワッチや糸を織物ルーペで覗きながら、糸の撚り・織り組織・糸密度・糸番手の違いなどを学びます。
「繊維業界の専門用語は業界外の方が見ると、『呪文』と言われます。」と濱田さん。ホワイトボードに書かれた『呪文』たち。
最初は全く読めないのですが、生地スワッチを熱心に覗きこみながら、講義を聴くにつれ、だんだんと読めるようになっていきます。
受講者の皆さんからは「甘撚りと強撚糸の明確な判断基準は?」という質問や、
「えっ!素材によって繊維の単位が変わってくるの…!?」「産地によって繊維の単位の計算が違う…!?」
など、マニュアルにはまとめきれない『感覚』の部分への質問(と、驚き)が止まりません。それらを会得するにはやはり現場に入るのが一番との事。濱田さんは工場の糸の整理をしながら『感覚』を覚えたそうです。
その後、遠州織物会館2階の展示ルームに受講生の皆さんでお邪魔しました。
所狭しと並んだ遠州産地で作られた生地はまるで宝の山。
先ほどの講義を受けた後なので、「これはなに?」「この生地素敵!」「さっきの話に出てきた織物はこれでね…」と話が弾みます。
生地の山の上には工場さんの名前と連絡先が。生地が名刺代わりになるようです。
繊維産地は現場にいかないと分からない。
だからこそ「遠州産地の学校」はとても貴重で大変勉強になる場になると思います。
「遠州産地の学校」は遠州という産地で、ゆかりある方達から、直接学ぶことができる。それが何よりも強みであると感じました。
第8回目、最終講義では受講者によるプレゼンテーションが行われます。
テーマは「自身や遠州産地の未来に向けて」。
繊維の事、生地の事、全8回の講義を通して遠州産地でについて学び、何ができるか考えていきたいです。
久野