奥田染工場さんを訪ねて

今回は、八王子にあるシルクスクリーンの工場、奥田染工場さんを訪れ、代表の奥田さんからお話を伺いながらの工場見学と、デザイナーと工場の関わり方を中心とした講義を受けました。

現地集合で向かったそこは、染料がずらりと並び、工場を初めて訪問したわたしは、作業味溢れた空間に圧倒されました。

早速工場の見学から。
奥田染工場さんでは、染料場・板場・蒸し場と3つに作業場が分かれています。
仕事のはじまりとなる色をつくる染料場。捺染台がありプリント作業を行う板場には、先代の友禅染の名残があります。そして水洗も含め後処理を行う蒸し場。

現在では蒸し屋さんが減っていることもあり、横の連携が難しくなってきているそうです。出来上がった布地のシワをのばし管に巻き出荷まで行う整理加工も、とうとう今では八王子からなくなり、現在は富士吉田の工場に依頼しているそうです。大きな染工場だと内製化させているところもありますが、ひとつの生地をつくりあげる様々な工程は、他県の工場に依頼しながら進んでいきます。

調色の作業から、実際にみせていただきながら仕事の流れを教えていただきました。

デザイナーからの指示書に合わせてその柄のパーツごとに色を調合する作業は、ひとつずつ相当の数がつくられ選ばれていきます。
基本的には、指示書通りにとにかく色を合わせることが重要視されるそうです。
ただ奥田さんの考えの中に、「もっと良い色をつくりたい」という思いがあります。

紙の上やパソコンの画面上でみる色と、最終的に仕上がる布に印刷された色が同じで良いのか、という問題提起。その布の糸の太さや粗さに合ったみえ方で、意図したデザインが落とし込めているかを考える必要があることを教わりました。

指示書はあくまでも頭の中のイメージであり、布の上でのリアリティーを大切に布と柄に合った色をデザイナーと直接やり取りしながら決定していくそうです。
ある色ひとつとっても、その色は永遠に存在していて、並べていくと差がみえてきます。小ロット生産で色を一緒につくっていく。デザイナーとの近い関係性が良いものを生み出すのです。

そんな色出しがされる染料場には、染料顔料はもちろんのこと、さまざまなテクスチャーを表現するための特殊なバインダーたちが集結しています。
色の深さなどの染め具合も、染料の配合を少しずつ変えてプリントした中からデザイナーに選んでもらったりもするそうです。

その時々で、使う助剤との関係もあり、天気や湿度によって色が変わることを考慮しながらいつ調色するのかを決めなければなりません。
そういった細かいところまで質問に答えていただきました。

そして今回は、アシスタントの里村さんに顔料を測るところから細かく作業の流れを見せていただきながら、オレンジ色と金色を調合していただきました。

続いて染料場から奥へと進み、版が並ぶ捺染台がある板場へと進みました。
そこで軽くシルクスクリーンの歴史についても触れながら、さて、今回の一大イベントです。

先程調合していただいた顔料を用いて、糸編オリジナル柄の版でひとりずつ捺染を体験しました。
皆で大きな捺染台へ布を広げる作業から行い、貴重な経験となりました。

そして興奮冷めやらぬまま、事務所に戻ってきました。講義の時間です。
若いデザイナーと工場との関わり方についてのお話を伺いました。
これまでの講義や産地遠征で、繊維工場を訪れ、様々な技術を見学してきました。
そこで、織り機においてのシャトル機やレピア機のように、同じ織りの機械でも仕上がりに違いができることを学んできました。

実際、知識が増えれば増えるほどそれぞれの長所と短所をみつけることができます。
染色の技術においても同じことが言え、染め方は数ほどありそこからデザインや用途に応じた技術を選ぶ必要があります。機械や技術の得意不得意を知っていることがまずひとつの基準となり、安易に技術を選ぶのではなく自ずとその時々のデザインに噛み合う技術がみえてくるのです。

また、デザイナーとして思い描いた商品をデザインする際、ポイントとなってくるのがコストと質です。
いちから製作するということは、その完成形がそもそも存在しないのですから、やってみないとその質の完成度は決まらないのです。いかに目指す完成度に沿って最初のコンセプトにプラスアルファで仕様変更ができるかが知識量で決まってくる。

知識不足の時はそういう面で質にまで頭が回らないからコスト重視の造りになりがち。知識をつけることの重要性を感じます。

さらに、素材を見る目を育むことは、どのような技術から生まれたかが分かるようになり自分の中のアーカイブとして蓄積され、そこから技術を選択する力になる。素材をよく観察することの必要性も説かれます。

そして本題「デザイナーと工場の関わり方」をピックアップしてのお話へ。
染色工場に生まれ、工場の立場もよく分かる奥田さんだからこそ
デザイナーとしてオリジナル商品を工場とつくる場合に持っておくべき覚悟を教えてくれました。

やはり人と人。
産地側もデザイナーが現場に来てくれるところはより理解をしてくれようとするそうです。そしてコミュニケーションには知識が必要不可欠なのです。

そんなデザイナーと工場のある生産地との立地的関係性に焦点を当てたお話も。

デザイナーと生産地に加えもうひとつ欠かせないのが消費者のいる消費地。デザイナーは消費地の空気を常に察知しデザインへと繋げるため、その2つの関係は近くあるべきなのです。

ですが現代の仕組みはネットや流通の発達によりこれまで常識化されていたものからまた新たな体制へと変化しつつあるのです。

ただ距離感は変わっていっても、画面上だけのやり取りでは良い質のものを生み出すことが難しいことに変わりはありません。
デザイナーと工場、デザイナーと消費者、どの関係においても、「机の上だけじゃない、直で生まれるリアリティー」が良い付き合いへ、そして良い質へと繋げてくれるのです。

工場とのやり取りに関しては、一般消費者と事業者とでは立場が全く違うことを理解することから、実際の例を挙げながらのわかりやすい説明がありました。
相手の立場に立ち返って考えること、企画者責任を持つことから良いものづくりははじまります。
徐々に相性や感覚の合う人と信頼関係を気づき、リスク管理ができるようになったころ、思い通りのものを生み出せるようになるのです。

染色のお話から工場との関わり方まで今回聞いたお話から、多くのものづくりの術を学ぶことができました。

奥田さん、この度はお忙しい中貴重なお時間をありがとうございました!

安岡