ニットの基礎

今回の講義では、横編みニットを中心に、嶋田隆弘さんに二週に渡りお話を伺いました。

嶋田さんは福岡に生まれ、文化服装学院にてニットデザインを勉強されました。その後山形県寒河江市のニットメーカーに6年間勤め、現在は原宿にあるニットとカットソーのOEM商社にて営業生産管理を務めています。

今回は二週にわけ、前半ではニットとは何か、基礎の仕組みを理解するための講義、後半ではニットの製品を仕上げるまでの流れとポイントを押さえる講義をしてくださいました。

さて前半の第一週は、根本的なニットの仕組みの理解からです。
まずはニットと布帛の違いからニットの三大要素である、番手・ゲージ・編み柄 というニットを形成するために必要な基本的な知識を学びました。
糸の太さ、針の密度、編み柄の選択によってニットは生まれるのです。そして現物がその場になくとも太さなどの感覚を共有するためのツールとなるのです。
また、布帛 と同じように編み目には天竺・リブ・ガーターという三原組織があり、その他にもそれらを組み合わせることで数えきれない種類の編み目が存在します。

ニットは感覚的な部分が多いと言う嶋田さん。
そこで大きな編み棒と太い糸を用いて手を実際に動かして、編み目をつくる工程をゆっくりとみせてくださりました。受講生のみなさんも直接編み目をつくって体感することで一本の糸からつくられる輪っかの繋がりを理解することができました。

そして、ニットといえばストッキングで想像される伝線。輪っかが横へ横へと繋がっていくはずなのに、どうして伝線は縦に走るのでしょうか。
新しい輪っかをつくる時、まえの輪っかに新しい糸を通して輪っかを繋げていきます。その時まえの輪っかは新しい輪っかの上の段になります。一見糸は横へと流れていきますが、輪っかの関係性は、縦の繋がりなのです。だから伝線も縦に走る。それが理解できた時、やっとニット構造のはじめの一歩を感覚的に掴めたように思いました。

そして編みの構造の理解の後は、編み方の種類の説明へ。
手編みの他に、手動機である家庭編み機・PC制御の自動編み機・無縫製で製品が編み上がるホールガーメントという編み方があります。
工業製品をつくるにあたって編むには限界があります。そうした流れから、自然と手動機から自動編み機へと技術は発展していきました。

その中でも今回は、家庭編み機を軸にニットの知識を深めました。
家庭編み機は70年代を中心に発展、全盛期には各地で教室も開かれるほど50〜60代の方には馴染みがあるものだそうです。生産は減少しており、現在は中古品が多く広まっています。

今回は、レディースのニットウェアブランド YUKI SHIMANE の島根由祈さんにもお越しいただきました。シーズンのほとんどの製品を、基本的には家庭編み機で試行錯誤しながらデザインしているという島根さんは、ロンドンのセントラルセントマーチンズ美術学校にてニットを学ばれました。

実際製作に使用されている家庭編み機もお持ちいただき直接目の前で動かしていただきました。
バーの内部構造を見ながら機械の動きを確認した後、バーを左右に動かすとどんどんと編み上げられていく様が目の前で繰り広げられ、リアルな音も知ることができました。

実践しながら、家庭機には錘が重要なことや、編み目には裏目と表目があり、あえて裏目を使うなどうまく組み合わせることで表現のひとつになることなども教えてくださりました。

説明と並行に質問が飛び交い、キャッチボールするかたちで嶋田さんと島根さんが皆さんの疑問を解消してくださりました。
島根さんへはブランドについての質問も多く、皆さん熱心にお話を伺っていました。

そんな質問から、編み目の増やし方減らし方を手編みと家庭機両方で教えてくださり、話は成型編みへ。
そしてホールガーメントについても。ホールガーメントとは、「輪っかの服」という名の通り、製品の形のまま編み上がってくる無縫製のニットの技術です。嶋田さんはニットメーカーにお務めの頃、ホールガーメントの機械を専門に扱っていたこともあり、幅広い知識を伝えてくださりました。

最後にリンキングというニット独自の縫製にまで話は及び、第一週のニットの基礎講義は終了しました。

安岡