— 3期生 逆ティーチングタイム vol.3 —
スタディコースでは第1期から毎講義のはじめ30分に『逆ティーチングタイム』を設けています。
産地の学校には、本当に幅広い業種、年齢、目標の方が集まります。
あまりにも個性的で面白い方が多いので、受講生さんにも先生になっていただきたい!という思いから始まったこの企画。
目的は個人の持つ知識の共有と、受講生さん同士の横の繋がりの強化に少しでも役立つことです。
今回の逆ティーチングは、『proto (egg) product project』のデザイナー・大小さんにお話を伺いました。
8年前に上京され、渋谷にあるセレクトショップDESPERADOでの販売員と並行して、衣装制作のお仕事なども請け負っていた大小さん。その後独立し、ご自身のブランドを立ち上げました。
シーズンごとのコンセプトを中心に、『proto (egg) product project』のこれまでの流れを、関西出身ならではの巧みな話術でお話くださいました。
『proto (egg) product project』は、製品をつくるプロジェクトという名の通り、商品をつくるのがうまくなりたいという大小さんの想いからはじまりました。立ち上げから6年、卸には出さずに、自分で商品を売ることにこだわっています。
1年目の2013年は、ブランド自体の準備期間だと考えていた大小さん。
準備と言ったら朝にパンを食べる、といった身近なところに発想をつなげ、そこに部活のような楽しさを、という想いで、その年のテーマを「パン部」として活動を開始しました。
パンのモチーフにたまごやジャムといった具材のモチーフをトッピングしていくシリーズでは、家での手作業にも、”準備”というコンセプトをあてはめていたそう。そのためシルクスクリーンを家で1日300枚も刷っていたとか。
トッピングによって価格に違いを出す、というところにも遊び心があって、選ぶ側が楽しみながら選ぶことができる、おもしろい仕組みだなと感じました。
ご自身でもモチーフに頼るところがあるとおっしゃっていましたが、そのモチーフがキャッチーであるからこそ、SNSにあげた写真で自分の想像以上に拡散されたそうです。そこから若者に人気が。そんな若者にどのような形でブランドとしてお返しができるのかを考えたとき、産地のものを使って質で返していこう、という想いに繋がったといいます。
だけれども、あえて産地を表立て発信するわけではなく、モチーフが気に入って購入した方が知らないうちに良いものを使っていること。商品にネームタグをつけず、ブランド名を表示しないこと。そこには”ものを見て選ぶ”ことを大切にしている大小さんの想いがあります。
2014年以降のお話もコンセプトから生地についてまで、丁寧に教えてくださいました。
初めてオリジナルのボタンを製作したとき費用の高さが身に沁みたこと、時には生地のデメリットと捉えられるリスクをもあえて取り入れその変化を体感してもらうこと、染色工場の方との現場での直接のやりとりで生まれる細やかな表現…。
ひとつひとつにコンセプトに合ったこだわりが存在していました。
大小さんはこれまでのことを、実験でやってきたつもりだともおっしゃっていました。
様々な表現を発表する中で、それぞれにかかる時間や金銭的課題を実際に自ら身をもって学ぶことは、ブランドを運営したいと考える方にとってはもちろん、ものづくりに携わる上でとても重要なことだと感じました。
その“実験”を数多くこなしていくためには、発想の豊かさが欠かせません。
大小さんのお話をお聞きしていると、言葉の節々にユーモアを感じ、コンセプト付けにも言葉遊びのような楽しさをもって取り組まれている様子が伝わってきました。
大小さん、貴重なお話をありがとうございました!
安岡