山梨、富士吉田で10月7日、8日の2日間開催されるハタオリフェスティバルと産地の学校がコラボさせていただくことになりました!
イベント中、特設ブースにて職人さんやデザイナーさんを招いてトークショー形式の産地の学校による『青空教室』を行います。受講生はもちろん、一般の方もご参加いただけます。前日の6日には、ヤマナシハタオリ産地バスツアー×産地の学校でスクールバスを走らせていただくなど、盛りだくさんな3日間!
ヤマナシハタオリ産地って?
ドビーって?ジャカードって?
整経ってなに?
見学だけでは腑に落ちなかった、ハタオリの仕組みや用語についても紐どいていきますので
産地の学校のプログラムに浸かってもらえればもらうほど、ハタオリ博士に近づけると思います!
今回は青空教室の準備として、富士吉田で打ち合わせをしてきましたので、当日のゲスト紹介と合わせてレポートしたいと思います。
そして青空教室のタイムテーブルです!!
7日
11:00~
『新しい機屋、新しいお針子』
WATANABE TEXTILE 渡邉竜安さん & 流しの洋裁人 原田陽子さん
13:00~
『徹底解剖!ドビー織機とジャカード織機』
テキスタイルフジ 渡辺さん & 織機番匠 渡邉徳重さん
15:00~
『テキスタイルデザイナーの仕事』
宮下織物 宮下珠樹さん
8日
11:00~
『整経屋の1日』
マルヒデ整経 桑原一憲さん
13:00~
『先染め産地を支える染色の仕事』
向原染色加工協同組合 羽田修さん
15:00~
『布を織る人、デザインする人』
舟久保織物 舟久保勝さん & イイダ傘店 飯田純久さん
会場
中村会館駐車場 特設ブース
〒403-0004 山梨県富士吉田市下吉田3丁目12−9
入場料 無料
お招きするゲスト講師をご紹介していきます。
まずはWATANABE TEXTILEの渡辺さん。
主にキュプラの滑らかな先染め生地をつくるWATANABE TEXTILEさん。
キュプラ(ベンベルグ)とは再生繊維で、コットンの棉花を採取した後に残る種の周りにある短い繊維、コットンリンターが原料。吸湿性と放湿性が良く、やわらかく滑らかであることから主に良質なスーツの裏地などに使用されます。
3代目である渡辺竜康さんは、良質な裏地を提供するかたわら、かかっているキュプラの経糸(たていと)に様々な素材の緯糸(よこいと)を入れることで、独特のやさしい風合いのオリジナル生地も作っています。経糸共通を利用した、機屋のオリジナル生地はどれもこれも色合いや表情が素敵で、思わず「かわいい…」と口から漏れてしまう布ばかり。
講義には、お裁縫箱を背負って全国各地に出向き、その場で出逢った人々に服を仕立てる「流しの洋裁人」こと原田陽子さんとタッグでご登壇!原田さんが渡辺さんの生地を使って仕立てた商品も披露していただきます!
次に紋紙制作のテキスタイルフジさんへ。
紋紙とは、ジャカード織機の経糸指示書のようなもの。
紙に空いた穴の有無により、経糸の上げ下げを指示するジャカード織機にとってなくてはならないもの。
この穴を機屋さんのデザインが織れるように空けるのが紋紙屋さんのお仕事です。織物には必要な工程が多く、それぞれを専門で請け負うので分業制が多いとよく言われます。
紋紙屋さんはそんな分業のうちの一つ。最近はフロッピーディスクなどから直接コンピューターに柄データを読み込む電子ジャカードがメインとなりつつあり、紋紙の需要は下がる一方。しかし、昔ながらの織機を直しながら大切に使う機屋さんの多い日本(特に富士吉田産地)では、紋紙を必要とする機屋さんは多くあります。なので、今でも続いている紋紙屋さんは無くてはならない大切な存在です。
そんなテキスタイルフジの渡辺さんと一緒に講義をしていただくのは織機番匠さん。
こちらは織機の修理などを専門に行う工場です。
50年間織機ひとすじの渡邊さんは、日本全国の織機を直して回っているそう。
というのも、かつて各産地にいた織機修理を専門にしている職人さんも現在では少なくなってきているのです。渡邊さんはなんとベトナムなど海外まで織機調整に行くそう!
工場を見せていただくと、ジャカードのみが置かれているのを発見!
普段は織機の最上部に設置されているので、まじまじと見ることが叶わない部分。
織機の構造を理解する際、とくに難しい部分。
紋紙からデータを読み、綜絖の上げ下げを行う心臓部です。
ジャカードを隅々覗いていると、渡邊さんがジャカードの部品を見せてくださいました。
金属棒を特殊な形に曲げて作られている部品は、製造する人がすでに1人しかいないそう。
渡邊さんのご好意で、こちらの部品を貸していただいたきました!
当日はテキスタイルフジさんの紋紙とこちらのジャカード部品の現物をお借りし、ジャカードの構造を丁寧に教えていただきたいと思います。
理解しづらいジャカード織機の仕組みを、部品を見ながら学べる機会なんてなかなか無いです!
次に紹介するのが先染めジャカードの宮下織物さん。
テキスタイルデザインや企画を担当されてる宮下珠樹さんに来ていただきます。
かつてはブライダル向けのサテンやシャンブレーなどを主に製造していたそうですが、現在は他にも衣装やフォーマル、カジュアル向けなど様々な物を製造。どれも先染めならではの色の豊富さ、鮮やかさが目を引きます。
珠樹さんの手がけたテキスタイルはどれもとても表情豊かで、デザインの過程の楽しさのようなものが伝わってきます。
それもそのはず、デザインの発想は普段の生活や出張先、また絵画や石畳など様々で、モチーフの美しさに惹かれてデザインにすることが多いそう。
また、技法から発想を得ることも多く、『寸分の狂いもないカット屋さん』と出会った際はその技法を最大限に生かす市松のカット生地を開発。
講義ではテキスタイルデザイナーとしてのお仕事について伺いたいと思います。
ここからご紹介するのは8日に来ていただく方々です。
はじめにマルヒデ整経の桑原さん。
これまた織物の分業の大切な工程の一つである整経。
機屋さんから指定された糸で、経糸の長さや密度を正確に同じテンションで巻き上げてゆく工程です。
初代社長のお父様から弟さんとともに兄弟で仕事を継ぎ、現在は1人で全ての仕事をこなす桑原さん。
仕事で一番大切にしていることは「機屋さんが織りやすい」整経だそうです。
実は私が手織りをする際、一番神経を使う工程が整経です。
整経の出来不出来がそのまま織り上がった作品の出来不出来につながるからです。
少しでもテンションが揃っていなかったり、糸のキズをそのまま整経していると、それが様々に影響しあい、デザインの出来さえも引っ張ってしまうのです。それは機械織機も同じです。
かなり大切な工程ですが、やはり全国的にも減りつつある整経屋さん。
講義では、整経屋さんが1日にしている作業を教えていただきながら、経糸が織機にかかるまでの工程を学びたいと思います。
次は染色について。
向原染色加工協同組合の羽田修さんにお話を伺います。
先染め織物が特徴の富士吉田で、主にカセ染めを行う染色屋さんです。
向原染色さんの特徴は、全て富士山の伏流水で染め上げるということ。
伏流水を汲み上げるポンプと貯水タンクが設置してあり、常に「鮮やかに染まる」富士の水で染められるそうにしているそう。染める素材によって染料も変えていくため、これまで作った色は数知れず。
ビーカー染色を行う部屋にはサンプルが数え切れないほど!!
今まで染めた糸を全て染料のパーセンテージと共に保管してあり、これらのサンプルを参考にしながら注文通りの糸を染めます。ビーカー染色したサンプルは、注文先からの指定通りの蛍光灯で色を確認。
なんと最終製品の販売される、売り場の明かりに合わせることもあるそうです。
講義では染色の仕組みや、素材と染料の組み合わせについて伺いたいと思います。
お次は舟久保織物さん。
こちらはほぐし織りを手がける機屋さんです。
ほぐし織りとは、荒く織った仮織りの生地に型染めをし、それをまた解し(ほぐし)ながら緯糸を織っていく技法で、明治40年頃にフランスから桐生、伊勢崎へ伝わったと言われています。
プリントと同じような柄の自由さを持ちながら、輪郭にかすれが生じ柔らかい表情を持ったり、緯糸によって様々な効果が得られたりと、他の技法には真似できない独特な表情を持つ織物です。舟久保織物さんが多く制作しているのが傘生地。
布をピンと張った状態で大きく広げて見ることのできる傘生地は、ほぐし織りの表情を存分に楽しむことのできるアイテムです。
そんな舟久保さんと共にものづくりするのはイイダ傘店さん。
イイダ傘店さんは個人オーダーの傘を制作する傘やさん。
布を織り、それをデザインするお二方の、ものづくりへの思いをセッション形式で伺いたいと思います。
以上のさまざまな方に参加していただく、産地の学校による青空教室in富士吉田の充実のプログラムです。
富士吉田に住んでいてもなかなか話を伺えないような方ばかりです。
かなりマニアックなお話も、なるべく分かりやすく、聴きやすくお話したいと思っています!
産地に興味ある方、テキスタイル好きの方、富士吉田にお住まいの方、みなさんで染織について勉強してみませんか?
遠坂